建設業界は、全業種の中でもトップの労働時間の長さが問題視されており、残業規制の動きがでています。
労働基準法が改正され「時間外労働の上限規制」が2019年に既に適用されていますが、建設業はすぐには無理だということでその適用を特別に遅らせられることになっているのです。
なぜ建設業では残業規制が遅れているのでしょうか。いつから施行されるのでしょうか。
今回は、建設業における残業規制の概要、適用時期、私たち働き手に及ぼすメリット・デメリットをご紹介します。
建設業の残業規制とは
建設業の残業規制は、改正労働基準法第36条5項で定められた「法律」となり、全ての企業が守らなければならない規制となります。
この残業規制が導入されることで、月の残業時間の上限は45時間、年間360時間が限度となります。
特別な事情(災害復旧や復興事業など)がある場合に限り、残業時間を月100時間・年間720時間以内にすることが可能です。
この残業規制を守らない会社は、法律の下に罰せられます。
残業規制が行われることで、建設業従事者の負担を大きく軽減できる可能性があるのです。
なぜ建設業は残業規制の適用が遅れているのか
実はこの残業規制、日本のほぼすべての業種で適用されていますが、建設業ではまだ完全に適用されていません。
大企業(社員3,000人以上)の場合は2019年4月から施行となり、中小企業の場合は2020年4月から施行開始となります。
なぜ建設業は残業規制の適用が遅れているのでしょうか。
建設業に従事している人であれば知っていると思いますが、建設業界は労働時間が他の業種に比べて長く、規制をかけたとしても「すぐにはとても守れない規制」になってしまうからです。
常に工期に追われていることから夜遅くまで・休日残業をするのは日常茶飯事であり、それには建設業だけでなく発注者側の理解も必要です。
そういった「一業種・一企業ではとても解決できない課題」が多く残っているから、建設業の残業規制は遅れてしまうのです。
建設業の残業規制はいつから適用されるか
建設業の残業規制の適用は、2024年の4月から適用されます。
上記の通り、残業規制というのは全ての業種に適用されるものです。
他の業種ですでに残業規制が導入されているにもかかわらず「うちの会社はまだまだ残業を強いられている」と感じた人もいるでしょう。
建設業界は残業規制の施行に5年間の猶予が設けられているので、まだ残業規制が適用されていないのです。
今すぐに残業を規制してしまうと仕事が回らなくなってしまうためです。
国は「できるだけ早く残業規制を導入しても回る仕組みづくりをしなさい」という意味合いを込めて、5年間の猶予の内に業務改善をする必要があります。
建設業で働いているあなた、普段の労働時間が長いと嘆いているだけではいけません。労使間では、「36協定」と呼ばれる協定が結ばれており、労働時間の上限が定められています。この記事で36協定について紹介しますので、当てはまる方は自身の健康のためにもすぐに辞めましょう。
残業規制を守らない会社はどうなる?
建設業で残業規制が導入されても、必ずどこかでルールを無視する会社が出てきます。
しかし、この残業規制を守らないと、「6か月以上懲役または30万円以下の罰金」というペナルティが課されます。
これは従来の「ルールを守らないと行政指導です」というような甘いペナルティではありません。
建設業に残業規制が導入される3つのメリット
ここでは、建設業に残業規制が導入されるメリットをご紹介します
今よりも早く帰れる可能性がある
まずは単純に今よりも早く帰れるということです。
建設業は、朝早くに家を出て夜遅くまで働かなければならない業種であり、自分の時間や家族との時間をなかなか確保できません。
しかしこの残業規制が導入されることで、プライベートと仕事を両立することができるため、充実した生活を送れるようになる可能性がでてきます。
休日に仕事に出る回数が減る可能性がある
建設業では、毎度のように休日仕事を行っていますが、この残業規制により休日出勤が減る可能性があります。
これを機になんとか休日に働かないようにしてほしいものです。
ブラック企業が減る可能性がある
残業規制に罰則がない場合、ほとんどの建設業界はこれを破るでしょう。
というよりも、破らざるを得ないほどの労働量の多さ・人手不足に悩まされているのが建設業界です。
しかし今回厳しい罰則が用意されたことで、発注主の理解が得られ、ルールを守る会社が増え、ブラック企業が減る可能性があります。
建設業界はその過酷な労働条件から、働き方改革を最も進めなければならない業界と言われています。 現状長時間労働は当たり前で、一日十数時間働くことも珍しくありません。 建設業界全体で言っても、長時間労働を美徳する古い慣習が目 …
建設業に残業規制が導入される3つのデメリット
では、反対に建設業に残業規制が導入されることのデメリットとは一体何なのでしょうか。
収入が減る
建設業界は比較的年収の高い業種と言われていますが、それは膨大な残業時間があってのことです。
現状サービス残業が横行している場合がほとんどですが、サービス残業を差し引いても多くの残業時間があります。
残業規制の導入により、必然的に残業時間が減るので、稼ぎが減ってしまうのです。
サービス残業の時間が増える
残業規制が導入されることで、働く時間が短くなります。
いくら何でも2024年までという短い期間で、人手不足の解消や発注主の理解が得られるとは考えられません。
作業の効率を上げなければならなくなるということですが、それも難しいでしょう。
したがって、残業規制の上限内に抑えるために、サービス残業の時間が増えてしまう可能性が高くなります。
工期が迫り精神的に追われる
上記でも言いましたが、建設業のブラック体質を変えるためには発注主の理解が必要です。
でも、本当に理解が得られると思いますか?
建設業も客商売です、より安く、より質が高く、より早く作ってくれる会社に発注します。
建設業が発注をもらって儲けるためには、工期をより短くする必要があるのです。
したがって、工期に常に迫られる状況は以降ずっと変わりません。
人手不足を解消するような技術革命が行われない限り、この状況は変わらないのです。
残業規制が導入されても建設業の未来は暗い
建設業界では、2024年の4月から残業規制が施行されます。
この残業規制が導入されることで、残業時間が減り、建設業従事者の負担が軽減される可能性もあります。
しかし、全ての問題が解決できるとは限りません。
人手不足など、まだまだたくさんの問題点が残されています。
この件について、以下の記事で詳細をまとめていますので、ぜひご覧ください。
「建設業は終わってる」と言う人がいます。この記事では、暗い未来と地獄の激務をご紹介しております。明るいと言われている未来さえ、本当にそうなのか疑わしいです。今の生活が嫌だという方は、建設業からすぐに脱出すべきだと言えるでしょう。
正直2024年にすぐ残業が減るとは思わないし、あと数年待ってても話にならないので、違う業界へ転職をしてみることをおすすめします
建設業界で働いている毎日が辛い人へ
なぜ、あなただけが辛い思いをする必要があるのですか?
建設業は本当に苦しい世界です。施工管理は苦しんで、苦しんで、苦しんでなんぼの職業です。
建設業界がどれほど辛い業界か、この記事を見ればわかります。脱出する方法も書いています。
読んでください。必ずあなたの人生が変わります。